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2023年6月号Volume 20 Number 6
病を制し、健康を手に入れるカギは脳?
「病は気から」は本当かもしれない。近年、脳と免疫系との結び付きが次々と明らかになっているのだ。科学者たちは、ゆくゆくは精神状態が体に影響を及ぼす仕組みを理解して、それをさまざまな疾患の治療につなげたいと考えている。
Editorial
Publishing Academy
学術界サバイバル術入門 学術誌の編集方針改定に対処する②
時とともに変化する出版方針。このシリーズではその潮流と対処方法をお話しします。第1回では「データ利用可能性ステートメント」について説明しました。今回は、利益相反(conflict of interest)と、その有無の判断や宣言の仕方について、説明したいと思います。
Research Highlights
リサーチハイライト
「酸が廃プラスチックに新たな命を与える」「マウスにミニサイズの枝角を生やす幹細胞」「自己修復ゲルがロボットカタツムリの這行を助ける」「迅速に広まるウイルスでコウモリの狂犬病抑制へ」、他。
News in Focus
恐竜の成長戦略は多様だった
非鳥類型獣脚類恐竜の大型化や小型化には、成長速度の変化と成長期間の変化が同等に関与していたことが、大規模な比較研究で明らかになった。
戦いに反応するミラーニューロンをマウス視床下部で発見
攻撃行動を引き起こす脳領域として知られる視床下部に、戦いを見るだけでも発火する脳細胞が見つかった。
グーグルの量子コンピューター、 誤り率低減のマイルストーン達成
使用する量子ビットの数を増やすと量子コンピューティングの誤り率が低下することが初めて実証された。
マウスはいかにして欲求の優先順位を決めるのか
空腹や喉の渇きに対する反応を調節するニューロンは、異性との社会的相互作用にも影響を及ぼすことが分かった。
脳がインフルエンザを感知し、休息を指示する仕組み
マウスでは、喉のニューロンが感染の兆候を感知し、その情報を脳に伝達していることが分かった。
生きた魚の体内に入れるとひとりでに電極を形成するゲル
生体に注入すると、体内の化学過程を利用して導電性ポリマーに変化する材料が開発された。埋め込み型電子デバイスの改良につながる可能性がある。
ヒト神経幹細胞の脳での分化過程を追跡
ヒトの脳を構成する重要な細胞はどんな細胞から生じるのか。精緻な細胞分析とマウス脳への移植で細胞系譜が追跡された。
Features
生命の誕生に関わったRNA
タンパク質を合成できる原始地球のRNAの復元に向けて、リボソームの構造を解き明かしたノーベル賞受賞科学者の研究チームが大きな一歩を踏み出した。
病を制し、健康を手に入れるカギは脳?
「病は気から」は本当かもしれない。 近年、脳と免疫系との結び付きが次々と明らかになっているのだ。科学者たちは、ゆくゆくは精神状態が体に影響を及ぼす仕組みを理解して、それをさまざまな疾患の治療につなげたいと考えている。
News & Views
常温常圧での超伝導へさらに一歩
電気抵抗ゼロで電流が流れる超伝導物質にとって、室温かつ大気圧で超伝導状態になることは、多くの技術的応用のために必要な条件だ。そうした常温常圧で超伝導状態になる物質として、水素を多く含んだ物質が有望であることを示す結果が得られた。
オウムアムアの不可解な動きを説明できる現実的なモデル
初の恒星間天体であるオウムアムアからは、一見矛盾した観測結果が得られている。今回、この謎めいた天体の数々の特異性を単純かつ物理的に現実的な枠組みで説明することのできるモデルが提示された。
腸内細菌が腫瘍の治療成績に影響を及ぼす
腸内細菌が産生する分子が免疫細胞に作用することで、膵臓がんに対する化学療法の奏効率が向上することが分かった。この発見は栄養学的介入により治療成績を改善できる可能性を示している。
活性化された免疫細胞が神経変性を促す
アルツハイマー病の特徴であるタウタンパク質が凝集したモデルマウスの解析により、免疫細胞が協働してタウ関連神経変性を促すこと、また、すでに臨床で使われている薬剤がこの疾患に有効である可能性が明らかになった。
培養で起こる染色体異常を利用して、雄マウス細胞から卵を作製
マウス幹細胞は、培養しているうちに染色体を獲得あるいは喪失する傾向がある。この事象を利用して、雄のXY細胞をXX細胞に転換した後、この細胞を分化させて機能的な卵を作り出し、仔を出生させることができた。
Advances
おしっこの塊に残された記録
ある小動物が残した“尿塚”が古気候と人間の技術のつながりを明かす。
Where I Work
Boyan Slat
Boyan Slatは、オーシャン・クリーンアップ(オランダ・ロッテルダム)の創設者・最高執行責任者
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