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Nature Video活用事例

微生物と共存する私たち

The microbes that live with us from cradle to grave

Inside your body there are trillions of microscopic organisms: bacteria, viruses, fungi and archaea - collectively known as the microbiota. Over the past decade, we’ve learnt that these communities help to shape our physiology and contribute to our wellbeing. But there are still many questions: When do we acquire our first microbes? How does our microbiota change throughout our lives and how do these changes differ between people or contribute to disease?

Alongside this animation we have published a series of essays about the human microbiota, which you can read here: https://www.nature.com/collections/bh...

This Nature Video is editorially independent. It is produced with third party financial support. Read more about Supported Content here: https://partnerships.nature.com/comme...

その他の Nature Video

微生物を獲得するのはいつ?

ほとんどの科学者は、私たちが生まれてくるときに最初の細菌を獲得し、胎児は無菌の状態で育つと考えていた。しかし、最近のいくつかの研究では、胎盤や胎児のまわりの羊水、それに胎児の最初の便である胎便にも、細菌のDNAの痕跡が発見されている。このことは、私たちが生まれる前に細菌と共存している証拠ではないだろうか?

この結果は、研究サンプルが意図せずに細菌に触れてしまったためだと多くの研究者は考えており、議論の真っ最中である。研究結果に対する答えがどうであれ、最初の細菌集団の獲得は、出産中とその直後であることには誰もが同意する。赤ちゃんは出産されるときに産道を通ることによって、母親がもっていた細菌を獲得する。

出生後、赤ちゃんは空気や物やまわりの人々との接触からさらに多くの微生物を獲得する。赤ちゃんの成長に伴って、食事、どれだけ多くの人々が接触したか、ペットを飼っているかどうか、どこに住んでいるか、抗生物質や薬を服用したかどうか、さらには本人の遺伝子構造などによって、どのような微生物をどれだけ体内にもつか(微生物叢)が決まる。

動物が多く生息するような農村地帯に住んでいる子どもたちは、都市環境で育つ子どもたちとは違った微生物叢になる。

微生物と私たちの健康

もしいろいろな種類の微生物に接触しなければ、喘息や湿疹などの自己免疫疾患やアレルギー症状を発症すると考えられる。これは「衛生仮説」として知られており、微生物叢がどのように私たちの一生を通じて健康に影響するかという1つの事例である。

成人になるまで、私たちの体は、ヒトの細胞の数ほどではないが、非常に多くの微生物を含むようになる。私たちの生理機能は、これらの微生物に大きく依存している。たとえば、有害な微生物から守ったり、食物の消化を手助けする。微生物が食物を分解し、血流を循環する「代謝物質」と呼ばれる分子をつくり出す。その物質は身体の隅々まで届き、代謝に影響を及ぼす。

腸内細菌の多様性は、健康的な代謝に寄与する。腸内に多様な細菌が存在しない状況は、炎症性腸疾患や肥満、さらに2型糖尿病に関係があるとされている。いくつかの研究から、微生物の代謝物質は脳やメンタルヘルスに影響を及ぼすことまで示唆されている。

体内の微生物の研究はまだこれから

私たちが年齢を重ねるにつれて、微生物叢は変化する。高齢者の腸内微生物叢は、若い人とは異なっていることが研究から明らかになっている。これは免疫系や脳機能の変化に関係する加齢現象の原因であるという可能性が示されている。

私たちの身体の中の多くの微生物が、どのように私たちの健康的な生活に寄与し、影響を及ぼすのかについて、研究すべきことはまだまだある。私たちは、人々の間でなぜ微生物叢に違いがあるのか、またそれらの違いは私たちの生物学的な側面にどのように影響するのかを、より理解する必要がある。さらに、世界中の地域の人々の細菌叢についての研究が必要だ。

明らかなことは、私たちは微生物なしには生きていけない、ということである。

学生との議論

Credit: Lisa-Blue/E+/Getty

ヒトの腸の中の微生物が、「腸内フローラ」と呼ばれて最近話題になっている。ヒトの腸には、約1,000種の細菌が1,000兆個以上も存在しており、個人によって細菌の種類や数は特有で、一致している人はいないという。これらの細菌を顕微鏡で観察すると、まるで花畑(flora)のように見えることから、腸内フローラと呼ばれている。腸内フローラのうち乳酸菌は食べ物を分解したり、免疫力を高めるなどのはたらきをするいわゆる「善玉菌」で、大腸菌などはタンパク質を腐敗させて毒素を出すなど、「悪玉菌」と言われる。しかし、もっとも多くを占めるのは、そのときどきで善玉菌の味方になったり、悪玉菌の味方になったりする「日和見菌」と呼ばれるもの。これらの比率は前述のとおり、人によって異なる。腸内細菌どうしが助け合ったり、競争関係になったりしながら、その人の腸内環境に合った細菌が生き残っているという。

「便の移植」によって腸内細菌の種類を再構築し、腸の病気を治療する臨床研究が行われており、ある種の病気に対しては有効であることが示されている。現在、潰瘍性大腸炎やクローン病などの病気に対する有効な治療法とするための基礎的な研究が行われている。

学生からのコメント

私たちが生きていて、微生物を実感することはないけれども、生まれてから今まで、さらにこの先も微生物と関わっていくと思うと興味深い。微生物がいろいろな疾患から守ってくれると知り、私自身が健康でいられるのも微生物のおかげであると、見方が変わった。(北風 優佳)

日常生活で微生物を目にすることはないので、今回の映像で微生物がいかに身近な存在であるか、よくわかった。私たちの生活環境の違いで微生物叢も異なるというが、どのような環境が望ましい微生物の環境なのか、詳しく知りたい。(高木 力)

Nature ダイジェスト で詳しく読む

いたずらな微生物
  • Nature ダイジェスト Vol. 16 No. 9 | doi : 10.1038/ndigest.2019.190936

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
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Nature ダイジェストISSN 2424-0702 (online) ISSN 2189-7778 (print)