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Nature Video活用事例

かつての南極は豊かな緑にあふれていた

An ancient Antarctic rainforest

An expedition drilling into the sea-floor near the South Pole has discovered the root network of an ancient forest. It reveals surprisingly high temperatures in the Antarctic during the Cretaceous period, and the existence of a rich, temperate rainforest just 900km from the Pole. 

Read the research here: https://www.nature.com/articles/s4158...

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南極で思い浮かべることといえば、どんなことだろうか。ペンギンやアザラシなどの動物、凍てつく寒さの中で研究活動を行う探検隊、あるいは巨大な氷河の一部が海に落下する光景などをイメージする人も多いだろう。

南極にはかつて森があった、ということをすんなり納得できる人はどれだけいるだろうか。地球環境の変遷は、私たちの想像をはるかに超えているかもしれない。

南極の古環境を探る

海底深くに保存されている、恐竜時代に生育していた植物の根の化石が南極での観測ミッションにより発見された。映像に映し出されている雪と氷しかない光景は、かつては豊かな森林だったのだ。9000万年前、南極点からわずか900キロメートルの所にある西南極には、温帯降雨林が存在したという。南極は南極横断山脈によって東西に隔てられており、東半球側は東南極、西半球側は西南極と呼ばれている。

Johann Klagesたちの研究チームは、海底下30メートルの所までの物質を収集するため、特殊なドリルを装備した船で探索に向かった。地下の物質を収集・調査するには、円筒形に地中をくりぬいて、内部の物質を回収するという手法が用いられる。このようにして回収されたものを「コア」と呼ぶ。

Klagesは回収したコアが非常に珍しいものであることを確信したという。そこで、研究所に戻ってCTスキャナーで内部の様子を観察することになった。映像では、CTスキャンの結果からコアの組成を色分けしたものが示されている。黄色の部分は砂岩であるが、さらに深い所(つまり過去に堆積した部分)では化石化した植物の根へと移行している。植物の根は互いに絡み合っており、元の状態のままでよく保存されていることが分かる。現在の森でも地下の根を観察すれば、このコアに含まれた化石と同じようなものを観察することができるはずだ。

花粉から知る古環境

コアには当時の環境に存在していた花粉や胞子も含まれており、コアを研究することで古代の温帯降雨林の環境について、より詳細を明らかにすることができる。花粉や胞子を作り出すそれぞれの植物は、生息に適した温度や日照などの環境が異なるため、花粉や胞子が地層中に残っていれば、当時の環境を推測することができる。コアの採取や地層調査によって、その場所の環境の変遷を知ることが可能になるのだ。

研究によって、この緯度でも当時は非常に暖かい気温であり、現在のイタリア北部の年間平均気温と同程度であったことが明らかになった。また、そのような環境では恐竜と昆虫が生息し、さらに極夜のために1年のうち4カ月も夜が続く環境であったことも確かである。

研究から考える地球の将来

南極に温帯降雨林が存在した時代は、地球史の中で最も温暖だった時期の1つであり、二酸化炭素濃度は現在の数倍だったと考えられている。

今回の研究による新しい発見は、氷の存在しない極地について知見を得る方法をもたらした。このような過去の極端な環境を研究することは、人類が将来を見つめることの助けになるとKlagesは期待している。

「このように極端な温室効果の進んだ気候は、気候変動の詳細を理解するために重要な研究です。人類が現在のペースで二酸化炭素を環境中に放出し続けると、この惑星がどうなるかを予測することで、私たちが将来を考えることにつながるからです」とKlagesは述べている。

学生との議論

Credit: Lisa-Blue/E+/Getty

古環境を推測するために、堆積物に保存された花粉や胞子を用いる方法が本文で紹介されている。花粉は受粉によって次世代に引き継ぐという重要な役割を担うが、実際に受粉する花粉は非常に少ない。作り出されたほとんどの花粉はそのまま地面に落ち、場合によっては川に流れて海に流れ出し、海底に堆積して地層となって残される。

花粉や胞子の内部の原形質は分解されてしまうものの、外膜は圧力や高い温度、化学的な作用に対しても非常に強く、胞子の化石は先カンブリア時代とされる地層からも発見されている。花粉はその植物の種類によって特有の形態や構造をもち、顕微鏡で観察することで属のレベルにまで鑑別することができる。

地層中の花粉や胞子を分析すれば、その地層が作られた当時にどのような植物がどのような割合で存在していたかを知ることができる。例えば広葉樹であるハンノキ属は湿地林を好むとか、針葉樹であるトウヒ属は寒冷地を好んで生育する、といった具合に植生分布は当時の気候や地形などを反映しているため、古環境を推測することができるのだ。

学生からのコメント

プラスチックごみの削減を目的にレジ袋の有料化が本格的に始まったところだが、たくさんの人が協力して行動することは大変なことだ。私たちは将来を考えなければいけない立場であるので、危機感や当事者意識を持つために振り返る時間が必要だなと思った。(北風 優佳)

南極 = 氷河というイメージを持っていたので、かつて南極に温帯降雨林があり、昆虫も生息できる気候だったということに驚いた。この当時の海洋の水位は現在とどれほど差があるのかを考えた。地球の生物を取り巻く環境に与える温室効果による影響は本当に大きいものなのだと感じた。(浅沼 卓)

Nature ダイジェスト で詳しく読む

南極大陸沖で新たな島を発見
  • Nature ダイジェスト Vol. 17 No. 5 | doi : 10.1038/ndigest.2020.200503

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Nature ダイジェストISSN 2424-0702 (online) ISSN 2189-7778 (print)