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Nature Video活用事例

新たな化石で明かされるスピノサウルスの生態

泳ぐ恐竜:スピノサウルスの尾の秘密

A new fossil of one of the most unusual dinosaurs, Spinosaurus aegyptiacus, suggests it was a swimming predator powered by a fin-like tail. The find comes after decades of debate on how much of its life Spinosaurus would have spent in the water, and how reliant they might have been on aquatic prey. Paleontologist Nizar Ibrahim has been working at the dig site in the Sahara and describes his amazement at the unique tail bones they found under the rock and sand.

Read the research here: https://www.nature.com/articles/s4158...​

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子どもたちに大人気の恐竜。太古の生物として化石になって残り、私たちの夢をかきたてる。ティラノサウルスやステゴサウルスなどの名前を覚えている大人も多いことだろう。

恐竜は約1億4500万年前から6600万年前の白亜紀を代表する生き物だ。この時代に生存していたと考えられている恐竜にスピノサウルスがいる。ティラノサウルスよりも大きな肉食恐竜であることは分かっていたが、どのような生息圏であったのか、またどのような姿だったのかは詳細に分かっていなかった。

今回、新たに発掘された化石によって、これらの謎が明らかになりつつある。

スピノサウルスの謎とは

体長15メートルで体重7トンの大型肉食恐竜であるスピノサウルスは、現在のアフリカ大陸に生息していた。ここは今でこそ乾燥地帯だが、当時は大きな河川が存在していたと考えられている。

恐竜の研究は、化石となった骨をもとに、当時の生息環境などを考慮しながら、恐竜がどのような食性で、どのような場所を好み、どのような姿だったのかを復元する。もともと、スピノサウルスの化石は1912年に発見され、ドイツに保管されていたが、第二次世界大戦中の1944年の空襲によって破壊されてしまった。スピノサウルスの化石標本が失われたことで、研究はなかなか進まなかった。

その後、1996年、2014年とスピノサウルスの化石が発見された。非常に細かい歯を持ち、魚を食べるのに適していたこと、後脚は水中での生活に適した短いものであったことなどが順次明らかになり、そのたびに復元図も描き変えられていった。

大きな議論になっていたのは、スピノサウルスが単に浅瀬で生息していたのか、あるいは水中を自由に泳ぐことができたのか、ということだ。恐竜が水中を自由に移動していたという考え方は、古生物学者には受け入れられにくかった。そのような泳ぎが得意な体のつくりを示す恐竜の化石は発見されていなかったためだ。

新しい化石の発見

映像で紹介されているとおり、2020年に発表された研究では30個以上の尾骨の化石が発掘され、これは尾骨全体の長さの80%になる。これまでは数個の断片的な骨から、尾は長くて細いものだと推測されていたが、多くの化石が発見されれば、尾がどのような形だったかをより正確に復元できる。

スピノサウルスの尾は非常に強力な上、大きな「ひれ」が付いていたことが明らかになった。尾の形が分かると、さまざまな動物の尾と比較することによって、スピノサウルスの泳ぎがどれほど達者であったかを突き止めることができる。スピノサウルスはこの尾を使って自由に水中を泳いでいたと想像される。

恐竜の分類

恐竜は「竜盤類」と「鳥盤類」とに分類されており、これらは骨盤を形成する骨の向きの違いによるものだ。竜盤類は草食傾向の竜脚形類と、肉食傾向の強い獣脚類とにさらに分類される(鳥盤類は主に草食恐竜)。

スピノサウルスは獣脚類に分類されている。この分類群は大型肉食恐竜であるティラノサウルスや、小型肉食恐竜のヴェロキラプトルなど、二足歩行する恐竜の仲間がほとんどだ。ということは、獣脚類だが四足歩行していたスピノサウルスは珍しい種であることになる。

今後もさまざまな研究手法が、化石となったスピノサウルスの姿を解き明かしていくことだろう。

学生との議論

Credit: Lisa-Blue/E+/Getty

今から約6600万年前に起こった白亜紀の大量絶滅事件によって、恐竜だけでなく地球上のおよそ70%の生物種が絶滅したと考えられている。この事件の原因は、地球への隕石の衝突によって発生した火災による煙や、衝撃で生じた塵などが大気中に舞い上がったことで太陽光を遮り、地球の表面温度が低下したためであるという考え方が有力視されている。

生物の大量絶滅は白亜紀末のみの出来事ではなく、これまで地球上では複数回の生物大量絶滅事件が起こった。ペルム紀末の約2億5100万年前には、地球上の生物種のおよそ90%以上が絶滅し、地球史上最大の絶滅事件が起こったと考えられている。この大量絶滅事件の原因については現在もなお分かっておらず、全球規模の海岸線の後退によって食物連鎖のバランスが崩れてしまったため、あるいは大規模な火山活動によって地球環境が激変したため、などが仮説として示されている。

これらの大量絶滅を生き残った生物群が、やがてその後の時代で繁栄することになる。恐竜のほとんどは絶滅してしまったが、現在の鳥類は、白亜紀末期の大量絶滅事件を生き残った獣脚類の一部なのだ。

学生からのコメント

小学生の頃の通信教育の付録だった、レプリカのアンモナイト発掘キットを思い出した。発掘するとき、傷をつけないように気を張ったのをよく覚えている。生物のいろいろな特徴から生息地が特定できることに感心し、生物のそれぞれの特徴には理由があるのだと改めて感じた。(北原 亮佑)

草食恐竜はアンキロサウルスやトリケラトプスのように肉食恐竜から身を守るため、ある特定の部位が発達していることが多い。一方で大型肉食恐竜は、その時代の圧倒的な捕食者であったはず。そうなると、わざわざ他の環境に順応する必要はないのではないかと考えたが、どうなのだろうか。(横須賀 匠)

Nature ダイジェスト で詳しく読む

「泳ぐ恐竜」スピノサウルス
  • Nature ダイジェスト Vol. 11 No. 11 | doi : 10.1038/ndigest.2014.141107

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
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Nature ダイジェストISSN 2424-0702 (online) ISSN 2189-7778 (print)