太陽のように、水素からヘリウムへの核融合で生じるエネルギーによって輝く恒星にも、寿命がある。恒星の質量が大きければ大きいほど、その星は短命になる。大質量の恒星ではそれだけ中心核での核融合が速く進むためだ。水素をヘリウムに核融合しながら輝いている期間は、恒星の一生の中でもっとも長い「主系列」と呼ばれる段階である。
やがて恒星中心部で核融合に使う水素がなくなってくると、ヘリウムを使って核融合を引き起こす段階になり、その後は恒星の質量に応じて進化する。太陽の8倍以上の質量を持つ恒星では、中心核で鉄までの原子核を核融合で作り出し、超新星爆発を起こす(2013年5月号「超新星爆発直前の質量放出をとらえた」参照)。このNature videoで説明しているのがそれだ。
自らの重さで潰れる中心核
恒星がガスでできているにもかかわらず球形を保っていられるのは、中心部での核融合で生じた圧力と、恒星のガスを中心部に引き寄せる重力がつり合っているためである。このバランスが崩れてしまうと、球形を保っていられなくなる。
大質量の恒星の中心核で鉄が生成されると、それ以上の核融合を起こすことができなくなる。鉄の原子核は最も安定で、鉄を核融合させるためにはエネルギーが必要なためだ。核融合が起こらないため、中心部から外側へ向かう圧力がなくなり、恒星のガスは一気に中心部に落ち込み、鉄でできた中心核は潰れていく。この現象を重力崩壊といい、この仕組みで爆発を起こすものを、「重力崩壊型」超新星爆発という。
歴史書に記録された超新星
超新星爆発は、太陽が100億年の間に放出するエネルギー量を一瞬のうちに放出する。このときのエネルギーによって、鉄より重い原子核が合成され、宇宙空間に放出される。これほどのエネルギーが銀河系内で放出されれば、昼間でも超新星爆発を確認することができる。
古文書などから過去に起こった天体現象を研究する古天文学によれば、中国の歴史書『後漢書』に、西暦185年に突然現れた「客星」が記録されている。この天体は超新星SN 185であると考えられ、これは人類が記録した最古の超新星である。また、藤原定家(1162~1241年)が著した『明月記』にも西暦1054年に客星が出現したことが引用されている。これは超新星SN 1054で、その残骸は現在、「かに星雲」として観測できる。その衝撃波は現在も中心部から外側に向かって伝播していることが天文台の時系列の観測によって確認されている。
ベテルギウスの超新星爆発はいつか
銀河系では100年に1〜2個の割合で超新星爆発が発生するとされるが、「超新星爆発に近い」天体の1つが、オリオン座のベテルギウスだ。この天体は銀河系(天の川銀河)内に存在し、地球から720光年の距離にある。オリオン座の左上に位置する赤い恒星で、太陽の約20倍の質量を持ち、誕生から800万年ほど経過している。ベテルギウスは進化の最終段階にあるとされていて、2019年から2020年にかけて急激に暗くなった(大減光と呼ばれる)ことから、超新星爆発の前兆ではないかと新聞などに取り上げられた。しかし、2021年に発表された研究から、ベテルギウスの南半球の一部で温度が下がった結果、星の大気に存在する重い原子が固体となって塵となり、表面を覆ったため、星からの光が遮られたことが明らかになった(2021年8月号「超巨星ベテルギウスが暗くなったわけ」参照)。
また、同じ年に発表された別の研究からは、ベテルギウスの質量や直径について、さらに正確な値が明らかになった。これまでの推定より質量が小さく(太陽の16.5〜19倍)、半径はその約3分の2(太陽の750倍)で、より地球に近い(530光年)ことが示された。これまでよりも小さな質量であることから、現在のベテルギウスはヘリウムを核融合に使っている段階にあることが分かり、超新星爆発を迎えるには、さらに約10万年を要することが明らかになった。
学生との議論
映像での超新星爆発は「重力崩壊型」だが、他に「熱核暴走型」超新星がある。これは条件が整った白色矮星が起こす現象と考えられている。
2個以上の恒星が共通重心の周囲を軌道運動しているようなものを連星系と呼び、現在の研究では、恒星の半分以上が連星系を形成していると考えられている。太陽の8倍までの質量を持つ恒星は白色矮星へと進化する。連星系で白色矮星に進化した天体が存在し、他の恒星からガスが白色矮星に連続的に流れ込むことがある。炭素を中心部に含んだ白色矮星の表面にガス物質が降り積もり、白色矮星の質量が太陽の1.46倍を超えると、白色矮星内部で炭素が核融合する。この場合、炭素の燃焼が暴走し、さらに重い原子核が合成される。
これが熱核暴走型超新星で、白色矮星の質量が一定の範囲にあることから、爆発時に放出されるエネルギー量は理論的に一定であると考えられる。光源の明るさは距離の2乗に反比例することから、この種の超新星を発見できれば、その超新星までの距離を推定できることから、「宇宙の標準灯台」とも呼ばれている。
学生からのコメント
地球が太陽から1分間に受けるエネルギー量は、ダンプカー4000万台分の石炭を燃やした分と同じという。それも太陽が四方八方に放出するエネルギーの22億分の1だ。こんな数字から超新星爆発のエネルギー量を想像すると、他の天体に影響がないのかどうか、気になってしまう。(中谷 紘己)
ゲームや漫画でも知られている超新星爆発の話題で、中学生までは何となくかっこいいイメージを抱いていた。高校で星の一生を学んだが、映像を見て改めて規模の大きさを思い知った。授業では古文書の記録から天文現象を解明する古天文学という分野があることを知り、興味を持った。(三島 岬)
Nature ダイジェスト で詳しく読む
白色矮星の理論予測を偶然の発見で立証- Nature ダイジェスト Vol. 19 No. 8 | doi : 10.1038/ndigest.2022.220838
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