Article
非コードRNA:霊長類特異的非コードRNAのHPAT5はヒトの着床前発生過程での多能性および核の再プログラム化を調節する
Nature Genetics 48, 1 doi: 10.1038/ng.3449
lincRNA(長鎖遺伝子間非コードRNA)は哺乳類ゲノムの数千もの座位に由来しており、また、その多くに転位性遺伝因子(TE)由来の配列が含まれている。最近、TE由来のlincRNAファミリーが多能性の調節に関与していることが示されたが、それらのファミリーに属する各lincRNAに特異的な機能はほとんど分かっていない。本論文では、3つの新しいTE由来ヒトlincRNAであるHPAT(human pluripotency-associated transcript)2、HPAT3、HPAT5のそれぞれの特徴を明らかにしたことを報告する。機能喪失実験から、HPAT2、HPAT3、HPAT5が着床前の胚発生において機能し、多能性の獲得や内部細胞塊の形成を調節していることが示された。多能性幹細胞においてこれらのlincRNAに対応する遺伝子をCRISPR法で破壊し、次に全トランスクリプトーム解析を行うことで、HPAT5が多能性ネットワークの重要な構成要素であることが明らかになった。さらにタンパク質への結合やレポーターを基盤とするアッセイから、HPAT5がlet-7マイクロRNAファミリーと相互作用することが実証された。我々の結果は、大規模な霊長類特異的lincRNAファミリーのメンバーである個々のユニークなlincRNAが、発生過程での遺伝子発現や分化を調節することによって、細胞の運命を強固なものにしていることを示している。