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エピジェネティクス:変異型IDH1依存的なクロマチン状態の再プログラム化、可逆性、および持続性

Nature Genetics 50, 1 doi: 10.1038/s41588-017-0001-z

IDH1IDH2(イソクエン酸デヒドロゲナーゼ1と2をコードする)の変異は、神経膠腫やその他のヒト悪性腫瘍の発生をもたらす。変異型IDH1は腫瘍形成を促すエピジェネティックな変化を誘導するが、これらの変化の規模や可逆性については分かっていない。本研究では、ヒトのアストロサイトと神経膠腫の腫瘍様塊の系を用い、変異型IDH1が誘導するエピゲノム再プログラム化の大規模アトラスを作製した。その結果、DNAメチル化やヒストンの全体像、および転写の再プログラム化に関して、IDH1変異後に起こる変化の可逆性の特徴が明らかになった。また、複数のヒストン標識やクロマチン状態について、その局在や強度が、ゲノム規模に同調して変化していることが認められた。変異型IDH1は、増殖での優位性と幹細胞様の転写特性を持つCD24+集団を樹立する。さらに変異型IDH1に長期的に曝露されると、不可逆的なゲノム変化やエピゲノム変化が引き起こされた。今回の結果をまとめると、変異型IDH1依存的なエピゲノム再プログラム化に関して、新たな高解像度の分子レベルでの描写が得られた。これらの知見は、変異型IDHの機能を理解し、IDH変異腫瘍を標的とする治療法を最適化するための、大きな示唆を与えてくれる。

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