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筋ジストロフィー:p53は胚性幹細胞および顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー細胞モデルにおいてDux/DUX4を収斂的に活性化する
Nature Genetics 53, 8 doi: 10.1038/s41588-021-00893-0
哺乳類の胚では、適切な接合子ゲノム活性化(ZGA)は全能性が生じる基盤になっている。DUX(double homeobox)ファミリーの因子はZGAに関与していて、また、マウスDuxは培養2細胞(2C)様細胞の形成に必要である。注目すべきことに、マウス胚性幹細胞では、Duxは腫瘍抑制因子p53によって活性化され、Duxの発現により、発生運命の幅が拡張した細胞タイプへの分化が促進される。マウスDux座位のロングリード塩基配列決定とアセンブリーから、推定の正および負のフィードバックループなど、その複雑なクロマチン調節が明らかになった。我々は、p53–DUX/DUX4調節軸がヒトで保存されていることを明らかにした。さらに、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)の患者に由来する細胞は、霊長類特異的なサブテロメアLTR(long terminal repeat)10C配列のp53結合部位を介したp53シグナル伝達の際に、ヒトDUX4を活性化することを実証した。まとめると我々の研究は、胚性幹細胞、胚、FSHD患者由来の細胞では、p53の活性化が収斂進化的に進化していて、p53がDux/DUX4の活性化に結び付くようになっており、これによって、DUXファミリーの因子の発生調節と疾患調節が統合される可能性があり、証拠に基づいたFSHDの治療の機会が見いだされるかもしれない。