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セイヨウカラシナ:ゲノムから見たセイヨウカラシナの起源、栽培化、および多様化
Nature Genetics 53, 9 doi: 10.1038/s41588-021-00922-y
紀元前3000年頃という早期に栽培化されたにもかかわらず、古代より存在する異質四倍体種であるセイヨウカラシナBrassica juncea (L.) Czern & Cossの進化の歴史はよく分かっていない。本論文では、ロングリードおよびショートリード塩基配列決定、光学マッピング、Hi-C解析を統合することにより構築した、黄色種子セイヨウカラシナの染色体規模の新規ゲノムアセンブリーを報告する。世界各地に由来する480アクセッションの核DNAおよびオルガネラDNAについて系統解析を行ったところ、セイヨウカラシナは西アジアに単一の起源を持ち、自然種間交配によって8000~1万4000年前に生じた可能性が高いと考えられた。その後、独立した3経路で東方へと生育域を拡大させる過程で、自然発生変異と遺伝子移入により、新たな作物種が生じてきた。選択的スウィープの検出、形質に関するゲノムワイド関連解析、組織特異的RNA塩基配列決定解析により、このさまざまな用途に用いられる植物種の、開花期と種子重に関する栽培化の歴史と、この植物種に形態的な多様性を求めた人類による選択について、新たな知見が得られた。本研究は、セイヨウカラシナの起源と栽培化についての包括的理解を向上させ、ゲノム情報に基づく育種のための基盤となる情報を提供するものである。