Research Highlights 胎児および成人から単離したオリゴデンドロサイト前駆細胞は先天的にミエリン形成がない脳でミエリン化を起こす 2004年1月1日 Nature Medicine 10, 1 doi: 10.1038/nm974 妊娠後期および成人の前脳はいずれも多数のオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)を含む。この細胞は、A2B5+PSA-NCAM–(初期オリゴデンドロサイトマーカーA2B5が陽性で、ポリシアル化神経細胞接着分子が陰性)の表現型によって同定できる可能性がある。今回、OPCを二色型蛍光細胞分析分離装置(FACS)で21~23週齢のヒト胎児の前脳から、またA2B5選択法で成人の白質からそれぞれ抽出した。シバラーマウスの新生仔の前脳に異種移植した胎児由来のOPCは白質内に散在し、オリゴデンドロサイトおよびアストロサイトに分化した。宿主の脳では12週目までにミエリンの広範囲にわたる形成と緊密化、および軸索のミエリン化が認められた。ヒト成人白質から単離したOPCもシバラーマウスの脳をミエリン化したが、胎児由来のOPCと比較してより速く広範囲にわたり、かつ高密度のミエリン塩基性タンパク質(MBP)の発現が移植後4週まで認められた。成人由来のOPCは胎児由来のOPCに比べてオリゴデンドロサイトの出現効率がよく、ドナー細胞1個あたりのミエリン化された宿主軸索の数も胎児OPCより多かった。胎児由来および成人由来のOPCは共に、先天的にミエリン形成の見られない宿主の脳で広範囲にわたりしっかりしたミエリン鞘を形成したが、両者のちがいからすると異なる疾患を標的として使用する可能性が考えられる。 Full text PDF 目次へ戻る