Article ヘパリンは補体活性化の阻害により抗リン脂質抗体が誘発する胎児死亡を防止する 2004年11月1日 Nature Medicine 10, 11 doi: 10.1038/nm1121 抗リン脂質抗体症候群は、抗リン脂質(aPL)抗体の存在下で起こる血栓症および習慣性流産を特徴とし、治療は抗凝固療法によるのが一般的である。aPL抗体が誘発する胎児傷害には補体活性化が必須であり、それがこの病因ともなっていることから、我々はヘパリンが補体の働きを阻害して妊娠中のAPS患者の合併症を予防するのではないかと考えた。ヘパリン(未分画または低分子量)の投与はin vivoおよびin vitroでの補体活性化を阻害し、マウスではaPL抗体により誘発される妊娠合併症発症が妨げられた。やはり抗凝固剤であるフォンダパリヌクスおよびヒルジンは、いずれも補体分解産物の生成阻害や流産防止ができないことから、APSにともなう流産の予防には抗凝固療法では不十分であるとわかる。今回の結果から、ヘパリンは脱落膜組織で起こるaPL抗体が誘発する補体活性化を阻害して、APS女性患者の妊娠合併症を予防すると考えられる。 Full text PDF 目次へ戻る