Article PKC-αは心臓の収縮性と心不全傾向を調節する 2004年3月1日 Nature Medicine 10, 3 doi: 10.1038/nm1000 セリン/トレオニンキナーゼなどのプロテインキナーゼC(PKC)群は、細胞膜に結合しているほとんどすべてのシグナル伝達経路の下流で作用している。今回我々は、PKC-αが心臓収縮の基本的な調節因子であり、筋細胞のCa2+の取り込みを調節していることを突き止めた。Prkca心臓は収縮性が増大するが、Prkca遺伝子を過剰発現するトランスジェニックマウスの心臓では収縮性が低下する。ドミナント‐ネガティブ型あるいは野生型PKC-αの遺伝子をアデノウィルスを担体として心筋細胞に導入すると、収縮性はそれぞれ増大あるいは低下する。これは、PKC-α活性の修飾が筋小胞体中のCa2+ATPアーゼ2(SERCA-2)ポンプ阻害タンパク質であるホスホランバン(PLB)の脱リン酸化に影響を与え、筋小胞体のCa2+取り込みと、Ca2+濃度を一時的に変化させるという機構によって起こる。PKC-αは、プロテインホスファターゼ阻害剤1(I-1)を直接リン酸化し、プロテインホスファターゼ1(PP-1)の活性を変化させており、PLBリン酸化におけるPKC-αの影響はこの一連の反応によって説明されると考えられる。Prkca遺伝子の欠失によって生じる収縮性の増大は、過剰な負荷によって起こる心不全を予防し、筋LIMタンパク質をコードする遺伝子(Csrp3)の欠失によって起こる拡張型心筋症も予防する。Prkca遺伝子の欠失はまた、PP-1の過剰発現に関連して起こる心筋症も救済する。つまり、PKC-αは、細胞内Ca2+濃度とシグナル伝達過程を感知することによって心臓の収縮性を調節する中心的な統合因子として作用しており、これは心不全傾向に大いに影響している可能性がある。 Full text PDF 目次へ戻る