Article HPMA共重合体とTNP-470のコンジュゲートの血管新生部位への選択的輸送 2004年3月1日 Nature Medicine 10, 3 doi: 10.1038/nm1002 血管新生は腫瘍の増殖に重要である。このためO-(chloracetyl-carbamoyl) fumagillol (TNP-470)などの血管新生阻害剤が新しい種類の抗癌剤として出現しつつある。臨床試験でTNP-470は転移癌患者の腫瘍増殖を遅らせたが、腫瘍の退縮に必要な高用量では多くの患者で神経毒性が認められた。そこでN-(2-hydroxypropyl)methacrylamide(HPMA)共重合体がGly-Phe-Leu-Glyリンカーを介してTNP-470と結合した水溶性コンジュゲートを合成し、その作用を調べた。このコンジュゲートは透過性・滞留性亢進(EPR)効果があって腫瘍血管内に選択的に蓄積し、腫瘍内と肝切除モデルでin vivoにおいてTNP-470の活性を実質的に増強し延長させた。ポリマーとのコンジュゲートとしたことで、TNP-470の血液脳関門(BBB)通過は妨げられ、正常臓器における蓄積は減少し、薬剤に関連した毒性は回避された。TNP-470のマウスへの投与では体重減少および神経毒性が認められたが、今回のコンジュゲートではこのような変化は認められなかった。血管新生阻害剤に腫瘍血管系を標的として選択的に攻撃させるこの新しい方法は、癌治療法を合理的に設計する新たな戦略となる可能性がある。 Full text PDF 目次へ戻る