Article マロニルCoAデカルボキシラーゼの肝臓における発現は筋肉、肝臓、全身でのインスリン抵抗性を回復させる 2004年3月1日 Nature Medicine 10, 3 doi: 10.1038/nm995 脂質の注入、または高脂肪食の摂取はインスリン抵抗性を引き起こすが、この現象の基礎となる機構はわかっていない。本論文では、高脂肪食を与えたラットで、全身、筋肉、および肝臓でのインスリン抵抗性が、脂質の分配に影響する酵素であるマロニル補酵素A(CoA)デカルボキシラーゼ(MCD)を肝臓で過剰に発現させると改善されることを報告する。MCDを過剰に発現させると、循環血中の遊離脂肪酸(FFA)および肝トリグリセリドの量が減少した。骨格筋では、インスリン抵抗性に関与すると考えられている2種類の因子、トリグリセリドおよび長鎖アシルCoA(LC-CoA)の量に関して、前者は増加し、後者では変化は認められなかった。タンデム質量分析による36種類のアシルカルニチンを対象とした代謝プロファイリングの結果、脂質由来代謝物の1種であるβ‐ヒドロキシ酪酸の濃度が、MCDを過剰に発現させた動物の筋肉で大幅に低下していることがわかった。以上の結果は、肝臓におけるMCDの発現によって循環血中のFFA量が減少し、これが筋肉のβ‐ヒドロキシ酪酸量を減少させてインスリン感受性の改善を導くと考えるとうまく説明できる。 Full text PDF 目次へ戻る