Research Highlights

導入能のあるTAT-HA膜融合性ペプチドでは、脂質ラフトのマクロピノサイトーシスで取り込まれたあとのTAT融合タンパク質の脱出能が高まる

Nature Medicine 10, 3 doi: 10.1038/nm996

TATのタンパク質導入ドメイン(PTD)は、癌や脳卒中など多数の前臨床疾患モデルにおいて、治療用の生理活性のあるさまざまな積み荷分子の送達に使われている。しかし、その導入のしくみはまだわかっていない。TAT PTDは細胞表面に強く結合するため、細胞への取り込みに関する初期の研究では、温度やエネルギーに依存せずに脂質二重層を直接通過するものと考えられていた。今回我々は生細胞で、導入能のあるTAT–Creリコンビナーゼとレポーター遺伝子を使った解析法により、まず細胞表面でイオン間相互作用が起こり、そのあとにTAT融合タンパク質が脂質ラフトに依存したマクロピノサイトーシスによって急速に取り込まれることを示す。導入は、インターロイキン2受容体もしくはラフト、カベオラやクラスリンによるエンドサイトーシスやファゴサイトーシスと無関係だった。この知見を活用して、導入能がありpH感受性の膜融合性dTAT-HA2ペプチドを作ったところ、TAT-Creのマクロピノソームからの脱出能が大幅に高まった。以上を総合すると、これらの観察結果は生理活性を備え導入能のある新しい治療用分子を開発するための土台となる。

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