Letter 定着腫瘍における抗原欠損変異癌細胞のバイスタンダー除去 2004年3月1日 Nature Medicine 10, 3 doi: 10.1038/nm999 癌は、特異的な細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の標的となる抗原を発現している。しかし、癌細胞は遺伝学的に不安定である。その結果、標的抗原をもはや発現しない癌細胞の亜集団は、CTLによる破壊を逃れて増殖しつづける可能性がある。我々は、あるモデル系において、腫瘍間質によって効果的にクロスプレゼンテーションされるのに十分な抗原を元の癌細胞が発現している場合、細胞傷害性T細胞が、これらの抗原欠損変異癌細胞(ALV)を間接的に除去することを示す。元の腫瘍が発現している抗原が低レベルの場合は、細胞傷害性T 細胞は抗原陽性の元の癌細胞を根絶したが、ALVは逃れて増殖し、宿主を殺した。これとは対照的に、元の腫瘍が抗原を高レベルで発現していた場合には、細胞傷害性T細胞は元の癌細胞のみならず、ALVも根絶した。このALVの「バイスタンダー」除去には、抗原を提示することができる主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子を発現する間質細胞が必要である。またこのALVの「バイスタンダー」除去は、間質が破壊されている証拠を示す腫瘍において起こっていた。ALVは、腫瘍特異的CTLが、抗原陽性癌細胞によって産生・放出される抗原をクロスプレゼンテーションしている間質細胞を殺すときに、間接的に除去されたものと思われる。これらの結果は、変異癌細胞が逃避することを防ぐためには、腫瘍間質を標的とすることが一般的に重要であることを明らかにしている。 Full text PDF 目次へ戻る