Article m T O R の阻害はアポトーシスおよびHIF-1依存性経路の調節を介してAkt依存性前立腺上皮異常増殖を解消する 2004年6月1日 Nature Medicine 10, 6 doi: 10.1038/nm1052 PTENの機能喪失は、ホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)シグナル伝達およびAktの活性化を引き起こす。ラパマイシンの哺乳類における標的であるmTORの阻害が、PTENヌルの癌治療に有効かどうかについては臨床試験が進行中である。本論文では、腹側前立腺にヒトAKT1を発現するマウスの前立腺では、mTRO阻害により上皮細胞のアポトーシスが誘導されて、腫瘍性表現型が完全に逆転することを報告する。BCL2を前立腺特異的に共発現させるとアポトーシスが阻害されることから、細胞死の誘導にはミトコンドリア経路が必要であることがわかった。つまり、Aktの下流で必要とされるmTOR依存性生存シグナルが存在すると考えられる。しかし、mTOR阻害下ではBcl2が発現しても腺内の細胞増殖は部分的にしか回復しなかった。発現プロファイリングを行ったところ、AKTの活性化およびmTOR阻害に対する転写応答を構成する主要な遺伝子は、解糖系の大部分の酵素をコードする遺伝子を含めたHif-1α標的類であった。これらのデータから、AKTによって起こる前立腺上皮細胞の増殖には、mTOR依存性の生存シグナル伝達とHif-1αの活性化が必要であり、臨床的にみられるmTOR阻害剤耐性はBCL2発現、あるいはHif-1α活性の発現上昇を通して生じている可能性がある。 Full text PDF 目次へ戻る