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アルコール中毒:時計遺伝子Per2はグルタミン酸作動系に影響を与えてアルコール摂取量を調節する

Nature Medicine 11, 1 doi: 10.1038/nm1163

PeriodPer)遺伝子は概日時計の制御に関わっており、脳の複数の機能を調節すると考えられている。本論文では、Per2タンパク質のPASドメインに欠失のあるPer2Brdm1変異体マウスで、グルタミン酸作動系に変化が生じることを示す。こうしたマウスでは、グルタミン酸輸送体Eaat1の発現が低下し、アストロサイトによるグルタミン酸の取り込みが減少する。その結果、Per2Brdm1変異体マウスの脳では、細胞外部のグルタミン酸濃度が上昇し、それに伴ってアルコール摂取量が増大する。ヒトでは、PER2遺伝子に起こる変動がアルコール摂取の調節と関連している。アルコール中毒患者の飲酒渇望や依存症再発の防止に使用されるアカンプロセート(Acamprosate)は、グルタミン酸作動系の亢進を抑制することによって作用すると考えられている。この薬物は、Per2Brdm1変異体マウスで上昇したグルタミン酸濃度を低下させ、増大したアルコール摂取量を正常化した。つまり、これらの結果は、概日時計遺伝子Per2の機能不全とアルコール摂取量の増大との間をグルタミン酸が結びつけていることを実証するものである。

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