糖尿病は、生体内でインスリンが産生されない、あるいはインスリンを適切に利用できない疾患であり、世界的に深刻な健康問題である。glucagon-like peptide-1(GLP-1)などの、食物摂取に反応して分泌される消化管ポリペプチドは、膵β細胞からのグルコース依存性インスリン分泌を増強するインクレチンホルモンとして強い作用をもつ。遊離脂肪酸(FFA)はエネルギー源として重要であり、また消化管インクレチンペプチドの分泌を含むさまざまな細胞内過程でシグナル伝達分子としても働いている。今回、腸管に多く発現しているGタンパク質共役型受容体であるGPR120が、不飽和長鎖FFAの受容体として機能していることを示す。さらに、FFAによりGPR120を刺激すると、in vitroおよび in vivoでGLP-1分泌が促進され、血中インスリンが増加することがわかった。GLP-1は最も強力なインスリン分泌作用をもつインクレチンであることから、今回の結果は、食餌性FFAによるGPR120を介したGLP-1分泌が、糖尿病治療に重要であることを示している。