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呼吸器ウイルス:ウイルスのNS1遺伝子を標的とするsiRNAナノ粒子鼻腔内投与によるRSウイルス感染の阻害

Nature Medicine 11, 1 doi: 10.1038/nm1174

RSウイルス(呼吸器合胞体ウイルス、RSV)感染は気道感染症の主要原因の1つであるが、ワクチンや抗ウイルス薬は存在しない。RSVの NS1タンパク質は、宿主のインターフェロン(IFN)反応に拮抗すると考えられているが、その機序については不明である。今回、NS1遺伝子を標的としプラスミドによって運ばれる低分子干渉RNA(siNS1)を用いて、RSV感染の制御におけるNS1の役割を調べた。siNS1を導入したA549細胞ではRSV複製が減少したが、IFNを欠損するベロ細胞ではsiNS1の導入による複製の減少は見られなかった。siNS1は、A549細胞でIFN-βおよびIFN 誘導遺伝子の発現を増大させた。siNS1を導入したヒト樹状細胞では、RSV感染に際して1型インターフェロンが増加し、ナイーブ CD4+ T細胞から1型ヘルパーT細胞(TH1)への分化が起こった。RSV感染前、あるいは感染後にsiNS1ナノ粒子を鼻腔内投与したマウスでは、対照群と比較して肺内のウイルス力価がかなり低下し、炎症や気道反応性が軽減した。したがって、siNS1ナノ粒子はヒトでのRSV感染を効果的に阻害する可能性がある。

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