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運動神経疾患:Hsp90阻害剤17-AAGはポリグルタミンが関与する運動ニューロン変性を改善する
Nature Medicine 11, 10 doi: 10.1038/nm1298
熱ショックタンパク質90(Hsp90)は、その結合相手のタンパク質の折りたたみや活性化、組み立てに重要な役割をはたしており、シャペロン複合体を形成して存在している。球脊髄性筋萎縮症(SBMA)の病原性遺伝子産物であるアンドロゲン受容体(AR)は、Hsp90の結合タンパク質の1つである。今回、Hsp90の強力な阻害剤の1つである17-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン(17-AAG)の治療効果と、ポリグルタミンが過剰に伸長した変異型ARを分解する能力について調べた。17-AAGをSBMAトランスジェニックマウスモデルに投与すると、単量体および凝集体の変異型ARの量を減少させることによって運動障害が大幅に改善され、明らかな副作用は認められなかった。シャペロン複合体を検証すると、変異型ARは正常型ARと比較してHsp90-p23に対する親和性が高く、Hsp90シャペロン複合体を形成しやすい傾向にあった。また17-AAGは細胞およびトランスジェニックマウスの双方において、正常型ARよりも変異型ARの方の分解を促進した。17-AAGは、Hsp70およびHsp40も弱く誘導した。したがって17-AAGは変異型タンパク質の分解を促進する作用を有し、SBMAやおそらくは他の関連する神経変性疾患にも対応する新しい治療的アプローチになると考えられる。