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腫瘍:腫瘍抑制因子p53の抗酸化機能
Nature Medicine 11, 12 doi: 10.1038/nm1320
腫瘍抑制因子であるp53は、成長停止の誘導あるいはアポトーシスの開始により異常な細胞の増殖を抑えていることは広く知られている。本論文では、p53がこれらの機能に加えて、活性酸素種(ROS)による酸化(DNA損傷や遺伝的不安定性の主要な原因となる)からゲノムを保護することを報告する。重度のストレスがなければ、抗酸化物を生じる複数の遺伝子群の発現増加には比較的少量のp53で十分であり、それが細胞内ROSの減少につながる。p53の発現が低下するとDNAの過剰な酸化、変異発生率と核型不安定性の増大が起こるが、これらは抗酸化物質であるN-アセチルシステイン(NAC)を与えることで防止される。Trp53ノックアウトマウスの食餌にNACを加えると、このマウスに特徴的な高頻度のリンパ腫の発生が予防され、p53を欠く肺癌異種移植片の成長が遅くなった。今回の結果は、p53が非制限的な腫瘍抑制機能をもつという新しい考えを示すもので、抗酸化剤が癌の予防および治療に重要な役割を果たす可能性がはっきりした。