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腫瘍:造血系におけるStat3シグナル伝達の抑制は多要素からなる抗腫瘍免疫を引き起こす
Nature Medicine 11, 12 doi: 10.1038/nm1325
免疫系は腫瘍に対する外因的な抑制機構として作用し得る。したがって、腫瘍の進行の一部は、内在性の免疫学的監視を下方制御する機構にかかっている。このような阻害経路を明らかにすれば、抗腫瘍免疫を強化させるための有望な標的が得られる可能性がある。本論文では、多様な腫瘍浸潤免疫細胞でStat3が構成的に活性化されていること、また造血細胞からStat3を除去すると腫瘍の成長や転移を阻止する内在性の免疫学的監視系の作動が開始されることを示す。Stat3ー/ーの造血細胞をもつ担癌マウスでは、樹状細胞、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞や好中球の機能が著しく高まることが観察され、腫瘍退行に免疫細胞が必要であることが明らかになった。低分子薬剤を用いてStat3を選択的に阻害すると、この阻害剤の直接的使用によっては死滅しない定着腫瘍で、T細胞およびNK細胞依存的な成長抑制が誘導される。今回の知見は、Stat3シグナル伝達が腫瘍に対する本来的な免疫学的監視を抑制すること、また担癌宿主造血細胞のStat3阻害は、多要素からなる治療的な抗腫瘍免疫を惹起することを示している。