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幹細胞:毛嚢バルジの幹細胞は表皮の創傷修復に関与するが表皮の恒常性には関与しない
Nature Medicine 11, 12 doi: 10.1038/nm1328
毛嚢のバルジ領域において長命の上皮幹細胞が発見されたことにより、創傷後の表皮の再生および修復のいずれもがこの細胞に依存している可能性が考えられるようになった。今回我々は、バルジ細胞が表皮の再生に必要であるかどうかを判断するために、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-TK)をコードする自殺遺伝子をケラチン1-15(Krt1-15)プロモーターと組み合わせてバルジ細胞に導入し、バルジ細胞を選択的に除去した。本論文では、バルジ細胞の除去により毛嚢は完全に失われるが、表皮は残ることを示す。細胞運命予定地図実験から、毛嚢バルジの幹細胞はこれまで予測されていたように表皮増殖単位に統合される表皮に普段は細胞を与えないことがわかった。しかしながら、表皮が損傷を受けると、バルジからの細胞は表皮へと動員され、創傷の中心に向かって直線的に移動し、最終的にはっきりした放射状のパターンを形成する。バルジ由来の細胞は表皮の表現型を獲得するが、大部分は数週間のうちに表皮から除去されることは注目すべきであり、これはバルジの幹細胞は、迅速な創傷修復を担う短命で「一過的増殖を行う」細胞を産生することにより、表皮創傷に迅速に応答していることを示している。表皮と毛包の幹細胞は異なる細胞集団と見なさなければならないと考えられるので、今回の結果は遺伝子治療および創傷に対する治療法の開発の両者に関係してくる。