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微小血管変性:ニトロ化ストレス下で作られるトランス型アラキドン酸はトロンボスポンジン-1依存性の微小血管変性を引き起こす
Nature Medicine 11, 12 doi: 10.1038/nm1336
ニトロ化ストレスは、糖尿病性網膜症や未熟児網膜症などの場合、虚血に至る微小血管変性に重要な役割を果たす。これまでのところ、ニトロ化ストレスを仲介する因子についてはあまりわかっていない。我々は最近、細胞膜中でNO2によって介在されるアラキドン酸異性化の主要産物がトランス型アラキドン酸であることを報告したが、その生物学的役割は不明である。本論文では、網膜微小血管障害のモデルでトランス型アラキドン酸が、in vivoでNOに依存して生じることを示す。トランス型アラキドン酸は、invitroでは時間および濃度に依存した微小血管内皮細胞の選択的なアポトーシスを誘発し、またex vivoおよびin vivoでは網膜微小血管の変性を生じる。これらの作用には、血管新生阻害因子であるトロンボスポンジン-1の発現促進がかかわっており、従来知られているようなアラキドン酸代謝経路とは無関係である。この結果は、微小血管傷害におけるニトロ化ストレスの分子機構を考察する新たな手がかりとなり、虚血性網膜症や脳症などの、ニトロ化ストレスが関わる疾患の新たな治療法につながると考えられる。