Article 肥満:肝臓でのIKK-βとNF-κBの活性化から生じる局所性、全身性のインスリン抵抗性 2005年2月1日 Nature Medicine 11, 2 doi: 10.1038/nm1166 本論文では、肥満と高脂肪食(HFD)により肝臓でNF-κBとその転写標的遺伝子が活性化されることを明らかにする。我々は、肝細胞で構成的に活性なIKK-βを選択的に発現させることによって作出し、LIKKと名づけたトランスジェニックマウスで、肝臓でNF-κBをが若干活性化されたために起こる慢性、亜急性の「炎症」状態がこうした肥満などの状態に対応すると考えた。このマウスは、高血糖、肝臓での強いインスリン抵抗性、筋肉を含む全身での中程度のインスリン抵抗性といった特徴を持っており、2型糖尿病の表現型を呈した。LIKKマウスでは、IL-6、IL-1β、TNF-αを含む炎症誘発性サイトカインの肝臓での生産が、野生型マウスでHFDにより誘発した場合と同程度に増加した。LIKKマウスの肝臓と筋肉では、サイトカインシグナル伝達の亢進が並行して観察された。全身的にIL-6を中和したり、IKK-βをサリチル酸で阻害したりすると、インスリン抵抗性が改善された。IκBαスーパーリプレッサー(LISR)を肝臓で発現させると、LIKKマウスとHFDを与えた野生型マウスの両方で糖尿病表現型が回復した。これらの結果は、肝臓での脂質の蓄積が、NF-κBの活性化とその下流のサイトカイン生産を通じて肝臓に亜急性の「炎症」を引き起こすことを示している。これが、肝臓での局所的な、また全身的なインスリン抵抗性の原因となるのである。 Full text PDF 目次へ戻る