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心筋梗塞:フィブリン由来ペプチドBβ15-42は心筋を虚血・再灌流傷害から保護する。

Nature Medicine 11, 3 doi: 10.1038/nm1198

心筋梗塞の場合、現行の処置は心筋の損傷を縮小するために閉塞された血管を再開通させることを目標としている。再灌流は組織の救済に不可欠だが、これはさらなる損傷と炎症の発症の原因となることがある。本論文ではフィブリン由来ペプチドBβ15-42の今まで知られていなかった抗炎症効果を明らかにする。このペプチドはフィブリン断片N末端のジスルフィドknot-II(フィブリンE1断片の類似物)と競合して血管内皮(VE)カドヘリンに結合し、そのために白血球が一層の内皮細胞を越えて組織へ移動するのが妨げられる。急性および慢性の心筋虚血・再灌流傷害のラットモデルでは、Bβ15-42が白血球の浸潤、梗塞の大きさ、その後の瘢痕形成を大幅に減少させる。フィブリノーゲン産物が病因として働くことは、フィブリノーゲンをノックアウトしたマウスにおいても確認された。こうしたマウスでは梗塞の大きさは野生型より大幅に縮小していた。今回の知見から、フィブリン断片と白血球およびVEカドヘリンの相互作用が心筋損傷と再灌流傷害の病因にかかわっていると考えられる。生得的に産生されるペプチドであるBβ15-42は、ヒトでの再灌流による治療の有力な候補物質と思われる。

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