Letter 神経変性疾患:RNAiによる変異型SOD1のサイレンシングはALSモデルマウスの神経変性を防ぎ生存期間を延長する 2005年4月1日 Nature Medicine 11, 4 doi: 10.1038/nm1205 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、脳および脊髄の運動ニューロンの選択的な細胞死につながる致死的な神経変性症である。家族性ALSの一部はスーパーオキシドジスムターゼ( SOD1)をコードする遺伝子に優性変異が生じることが原因である。特定の遺伝子のサイレンシングを行うRNA干渉(RNAi)の出現は、ALSのような優性遺伝病の治療の助けとなると考えられる。我々は、ヒトSOD1遺伝子(SOD1)を標的とするRNAi分子の発現を誘導するレンチウイルスベクターを構築した。変異型ヒトSOD1(SOD1G93A)を過剰発現するように遺伝子操作を加えたマウスの種々の筋肉群にこのウイルスベクターを注入したところ、SOD1の特異的かつ有効な発現低下が認められ、脳幹および脊髄中の脆弱運動ニューロンの生存状態に改善が見られた。さらにこうしたマウスでは、SOD1のサイレンシングにより運動能力が改善され、ALS症状の発症が100%以上と大幅に遅れ、生存期間も正常の80%近くまで延びた。これらの結果は致死的な優性遺伝性神経変性症状のモデルマウスでRNAiにより生存期間を相当度延長した最初の例であり、この分野における現在までで最高の治療効果といえる。 Full text PDF 目次へ戻る