上皮性卵巣癌(EOC)は、卵巣表面をおおう単層上
皮または嚢胞から発生すると考えられてきたが、
EOCの主な亜型は生殖管のミュラー管由来上皮に似
た形態学的特徴を示す。今回、本来ミュラー管の分
化を制御しているHOX遺伝子群は、正常な卵巣表層
上皮(OSE)では発現されないが、さまざまなEOC
亜型で癌のミュラー管様の分化パターンに応じて発
現されていることを見出した。発癌性マウスのOSE
細胞でHoxa9遺伝子を異所的に発現させると、漿液
性のEOCに似た乳頭腫瘍が発生する。これに対し、
Hoxa10およびHoxa11は、それぞれ子宮内膜様お
よび粘液性様のEOCで見られる形態形成を誘導する。
H o x a 7 は系譜特異性を示さないが、H o x a 9 、
Hoxa10およびHoxa11のそれぞれの経路に従った
分化誘導能を亢進する。したがって、EOCのもつ形
態学的多様性およびミュラー管様の特徴は、生殖器
官のパターン形成を制御する分子プログラムの不適
切な活性化によって説明できると思われる。