Article 抗血栓治療の新たな標的であるPI3キナー ゼp110β 2005年5月1日 Nature Medicine 11, 5 doi: 10.1038/nm1232 血管損傷部位での血小板の活性化は出血阻止に必須 である。しかし、アテローム性動脈硬化斑が破綻し た部位に過剰に血小板が集積すると動脈血栓が形成 されることがあり、これは急性心筋梗塞や虚血発作 等につながる。レオロジー的な擾乱(大きな剪断応 力)は、血小板のインテグリンαIIbβ3(GPIIb-IIIa)の 接着およびシグナル伝達機能を亢進させるため、動 脈血栓症を助長する重要な要因となる。本研究では、 タイプIAホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)のア イソフォームp110βが、血小板の剪断応力による活 性化に必要なインテグリンαbIIbβ3の接着結合の形 成とその安定性の制御に重要な役割をもつことを明 らかにする。また今回アイソフォーム選択的に作用 するPI3Kp110β阻害剤を開発したが、これはイン テグリンαIIbβ3の安定な接着結合の形成を阻止する ので、形成される血小板血栓に欠陥が生じる。これ らの阻害剤はin vivoで閉塞性の血栓形成をなくす が、出血時間の延長は見られない。これらの結果は、 PI3Kp110βが抗血栓治療の重要な新しい標的であ ることを明らかにしている。 Full text PDF 目次へ戻る