Letter

神経成長因子を用いたアルツハイマー病

Nature Medicine 11, 5 doi: 10.1038/nm1239

コリン作動性ニューロンの消失はアルツハイマー病 の主要な特徴である。損傷、アミロイドの過剰発現、 老化の動物モデルにおいて、神経成長因子(NGF) はコリン作動性機能を刺激し、記憶を改善し、コリ ン作動性ニューロンの変性を防ぐ。今回、8人の軽 度アルツハイマー病患者を対象に、遺伝子操作によ ってヒトNGFを発現するように改変した自家繊維芽 細胞を前脳に移植することによって、NGF遺伝子の ex vivo送達を検討する第1相試験を実施した。6人 の被験者について、平均22か月におよぶ追跡検査 の後に、NGFに起因する長期的な有害作用は認めら れなかった。ミニメンタルステータス検査およびア ルツハイマー病評価スケール-認識能力サブスケー ルによる評価の結果、認知機能低下率の改善が示唆 された。PETによる連続スキャンでは、治療後に、 皮質の18-フルオロデオキシグルコースの有意な増 加(P<0.05)が認められた。また1例の脳剖検で、 NGFに対する強い成長反応の存在が示唆された。こ れらの知見は、アルツハイマー病に対してNGFを用 いてさらに臨床試験を行うことの正当性を支持する ものである。

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