筋ジストロフィーは多様な病型をもつ一連の疾患で、現時点では治療法がない。眼咽頭筋ジストロフィー(OPMD)は、遅発性かつ進行性の常染色体優性疾患で、一般に50代または60代で発症し、嚥下困難、眼瞼下垂、近位四肢の筋力低下を伴う。OPMDは、poly-(A)binding protein nuclear 1(PABPN1)遺伝子のコード領域中の3塩基反復配列の異常な伸長((GCG)nと表される)が原因である。非罹患者では、(GCG)6が10個のアラニン残基からなるホモポリマー領域の先頭の6残基をコードしている。OPMD患者のほとんどで、この(GCG)6が(GCG)8-13に伸長しており、変異型PABPN1ではこの領域に12から17残基のアラニンが含まれる。ポリアラニン領域が伸長しているPABPN1は、骨格筋繊維の核内に管状フィラメントからなる凝集体を形成する。今回、骨格筋繊維中に核内凝集体およびTUNEL染色陽性核が見られ、進行性の筋力低下を示すOPMDのトランスジェニックマウスモデルを作出した。こうした異常の発生はドキシサイクリンの投与で相当度遅れ、症状は緩和された。ドキシサイクリンの治療効果は、凝集体を減少させ、独特の抗アポトーシス作用をおよぼすためであると考えられ、OPMDの安全かつ実施に適した治療法となる可能性がある。