Letter コロナウイルスによる肺傷害におけるアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)の重要な役割 2005年8月1日 Nature Medicine 11, 8 doi: 10.1038/nm1267 2003年、新発見の重症急性呼吸器症候群(SARS)と名づけられた疾患が数か月間にわたり世界中に急速に蔓延した。SARSの病原体は新しいコロナウイルス(SARS-CoV)で、これが重度の肺炎およびしばしば致死性となる急性肺不全を引き起こすことが明らかになった。さらに、感染者の間ではスペイン風邪のようなインフルエンザや新しい呼吸器疾患ウイルスの出現が、急性肺不全による高い死亡率をもたらした。細胞系の実験では、アンジオテンシン変換酵素(ACE2)がSARS-CoV受容体である可能性が確認されている。SARS-CoV感染の高い死亡率、その莫大な経済的・社会的影響、新たな集団感染に対する不安だけでなく、これらのウイルスは生物兵器に悪用される可能性もあるところから、SARS-CoVによる発病機構の解明は最重要課題といえる。本論文では、ACE2がin vivoでのSARS-CoVの重要な受容体である遺伝学的証拠を初めて示す。SARS-CoVの感染およびSARS-CoVのスパイクタンパク質は、ACE2の発現を抑制する。in vivoでマウスにSARS-CoVスパイクを注射すると急性肺不全が悪化するが、これがレニン・アンジオテンシン系の遮断により軽減されることは注目すべきである。今回の結果は、SARS-CoVの感染が重篤でしばしば致死的となる肺不全を引き起こす理由を分子レベルで説明しており、SARSやおそらくその他の呼吸器疾患ウィルスに対しても有効な合理的治療法を示唆するものである。 Full text PDF 目次へ戻る