Article 神経変性疾患:ヒアルロナンは脱髄損傷部に蓄積してオリゴデンドログリア前駆細胞の成熟を阻害する 2005年9月1日 Nature Medicine 11, 9 doi: 10.1038/nm1279 脱髄は、多発性硬化症などの多くの神経変性疾患の顕著な特徴である。本来ならばミエリンを形成するオリゴデンドログリアに成熟するオリゴデンドログリア前駆細胞(OPC)は、脱髄損傷部の周辺に存在することが多いが、脱髄の起こった軸索でミエリン再形成を起こすことはない。今回、グリコサミノグリカンの一種であるヒアルロナンが、多発性硬化症患者および実験的自己免疫性脳脊髄炎を起こしたマウスの脱髄損傷部に蓄積することを見いだした。アストログリアによって合成される高分子量(HMW)のヒアルロナンは慢性脱髄損傷部に集積し、このようなヒアルロナンはリゾレシチンによって誘導された白質脱髄後のミエリン再形成を阻害する。HMWヒアルロナンが存在する脱髄損傷部ではOPCが集積するが、ミエリン形成細胞に成熟しない。また、培養OPCにHMWヒアルロナンを与えると前駆細胞の成熟が可逆的に阻害されるが、アストログリアとOPの共培養系でヒアルロナンを分解するとオリゴデンドログリアの成熟が促進される。したがってHMWヒアルロナンは、脱髄損傷部に移動・集合するOPCの成熟を妨げることで、ミエリン再形成不全を大きく助長している可能性がある。 Full text PDF 目次へ戻る