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疼痛:GTPシクロヒドロラーゼとテトラヒドロビオプテリンは疼痛の感受性とその持続を調節する
Nature Medicine 12, 11 doi: 10.1038/nm1490
本論文では、テトラヒドロビオプテリン(BH4)合成の律速酵素であるGTPシクロヒドロラーゼ(GCH1)が、末梢神経障害性疼痛および炎症性疼痛の重要な調節因子であることを報告する。BH4は、カテコールアミン、セロトニン、一酸化窒素の産生に不可欠な補助因子である。軸索損傷後には、GCH1の発現増加によって一次感覚ニューロンでBH4濃度が上昇した。また、末梢炎症後にはGCH1酵素活性が上昇するために後根神経節(DRG)でBH4濃度が増加した。ラットでBH4のde novo合成を阻害すると、神経障害性および炎症性の疼痛が軽減され、DRGでの神経損傷に起因する過剰な一酸化窒素産生が妨げられたが、BH4をくも膜下腔内に投与すると疼痛は悪化した。ヒトでは、GCH1遺伝子のハプロタイプ(集団頻度15.4%)と、持続的な神経根性腰痛のための椎間板切除後の疼痛程度の低さとの間に有意な関連が認められた。このハプロタイプをホモ接合でもつ健康な被験者では、実験的疼痛の感受性低下がみられ、またハプロタイプ個体からの不死化白血球をフォルスコリンで刺激したところ、GCH1の発現増加の程度は対照よりも低かった。したがって、BH4は疼痛の感受性および慢性性に対する内因性調節因子であり、GTPシクロヒドロラーゼのハプロタイプはこれらの形質のマーカーとなる。