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癌:肝臓の前駆細胞に由来するヒト肝細胞癌の新規な予後的サブタイプ

Nature Medicine 12, 4 doi: 10.1038/nm1377

肝細胞癌(HCC)患者の予後は多様であることから、HCCには数種の異なる生物学的表現型が存在していると考えられる。これらの表現型は、腫瘍発生に際して異なる発癌経路が活性化されたこと、あるいは異なる細胞起源をもつことのいずれか(またはその両方)の結果であると思われる。本論文では、HCCの転写的特性から腫瘍の細胞起源が考察できるかどうかを調べた。ラット胎仔の肝芽細胞、およびヒト成人ならびに成体マウスモデルのHCC発症肝細胞における遺伝子発現データの統合・検討をおこなった。胎仔の肝芽細胞と共通の遺伝子発現パターンを有するHCC患者の予後は不良であった。このサブタイプと他のタイプのHCCとを区別する遺伝子発現プログラムには肝臓の卵形細胞のマーカーが含まれることから、このサブタイプのHCCは肝臓の前駆細胞から発生すると考えられる。遺伝子ネットワークの解析から、新たに同定されたこのHCCサブタイプではAP-1転写因子が活性化されており、これが腫瘍発生において重要な役割を果たしている可能性が示された。

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