主要組織適合複合体(MHC)クラス-I拘束性抗原提示の欠陥はヒトの癌でしばしば見られ、またマウスでは腫瘍の細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の免疫監視回避につながる。本論文では、この回避を防止できる独特なCTL種が存在することを示す。このCTLは、TAP(transporter associated with antigen processing)、タパシンもしくはプロテアソームの機能に欠陥がある細胞の表面上のMHCクラスI内に現れる、別のレパートリーのペプチドエピトープを標的とする。これらのペプチドは、普通に発現しているLass5タンパク質(Trh4としても知られる)のような自己抗原由来であるにもかかわらず、正常細胞では提示されない。このことから、これらのペプチドが免疫応答を誘発する新規抗原として作用する理由が説明される。この新たに発見されたエピトープは、養子T細胞移入またはペプチドワクチン接種によって、プロセシング欠損腫瘍に対する免疫的介入に使えるかもしれない。