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脊髄損傷:Stat3およびSocs3遺伝子の条件的な欠失により明らかとなった脊髄損傷後の反応性アストロサイトの役割の二面性
Nature Medicine 12, 7 doi: 10.1038/nm1425
損傷を受けた中枢神経系(CNS)では反応性アストロサイトがグリア性瘢痕を形成し、軸索再生を阻害すると見なされているが、その機能はいまだに明らかでない。本論文では、反応性アストロサイトが創傷治癒および機能回復において重要な役割を担うことを、Nestin遺伝子のプロモーター・エンハンサーの制御下でStat3(signal transducer and activator of transcription 3)遺伝子またはSocs3(suppressor of cytokine signaling 3)遺伝子を選択的に欠失させたマウス(Nes-Stat3-/-、Nes-Socs3-/-)を用いて示す。Nes-Stat3-/-マウスでは、反応性アストロサイトの遊走は低下しており、挫傷性脊髄損傷(SCI)後、きわめて広範囲な炎症細胞の浸潤、神経細胞の脱落、および重篤な運動障害をともなう脱随が生じていた。逆にNes-Socs3-/-マウスでは、反応性アストロサイトが損傷部位へ速やかに遊走し、炎症細胞を脊髄組織から隔絶することにより損傷範囲の縮小が促進されて、運動機能の著しい回復が観察された。これらの結果は、Stat3がSCI後の治癒過程において反応性アストロサイトの重要な制御因子となることを示唆しており、STAT3シグナルの修飾はCNS損傷に対する新たな治療的介入の標的となり得ると考えられる。