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寄生虫感染症:マンソン住血吸虫の表面にあるテトラスパニンは住血吸虫症に対する防御抗原である
Nature Medicine 12, 7 doi: 10.1038/nm1430
血液中に住む住血吸虫には世界中で2億人が感染しており、年間数十万人がこのために死亡している。我々はシグナル・シークエンストラップ法を用いて膜内在性タンパク質テトラスパニン(TSP)に属するTSP-1とTSP-2をコードする2種のcDNA、Sm-tsp-1とSm-tsp-2をマンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)よりクローニングした。さらに、組換えTSP融合タンパク質に対する抗体を作製し、これら2つのタンパク質がともにマンソン住血吸虫表面に露出していることを明らかにした。組換えTSP-2は自然耐性をもつ個体のIgEには認識されないものの、IgG1とIgG3には強力に認識される。しかし慢性感染者または感染歴のない個体のIgGには認識されず、一方組換えTSP-1はいずれのIgGにも認識されない。マウスに組換えタンパク質を使ったワクチンを接種した後に、マンソン住血吸虫投与をおこなったところ、成虫投与の場合と肝臓内虫卵投与による感染が、2つの独立した試験の平均でTSP-2の場合それぞれ57%と64%、またTSP-1の場合34%と52%減少した。糞便中の虫卵数は両被検グループで65%から69%減少した。特にTSP-2は、WHOが設定した住血吸虫に対するワクチン抗原を臨床試験に進める際の基準値を40%も上回る防御性を発揮した。自然耐性をもつ個体による選択的認識を加えると、TSP-2はマンソン住血吸虫に対する実効性のあるワクチン抗原であると考えられる。