Article
肥満:神経のPTP1Bは、体重、脂肪量、レプチン作用を調節する
Nature Medicine 12, 8 doi: 10.1038/nm1435
肥満は大きな健康問題であり、2型糖尿病の危険因子である。レプチンは脂肪細胞から分泌されるホルモンで、視床下部に作用して摂食量を抑制し、エネルギー消費量を増加させる。肥満者のほとんどが、高レプチン血症およびレプチン抵抗性を発症しており、外来性に投与したレプチンの治療効果には限界がある。チロシンホスファターゼであるPTP1Bを欠くマウスは、食事性の肥満を起こしにくく、レプチンに過敏性であったが、こうした影響の作用部位や作用機構については論争が続いている。今回、組織特異的にPTP1Bをノックアウトしたマウス(Ptpn1-/-)を作出した。神経がPtpn1-/-であるマウスは体重や脂肪量が減少し、活動量やエネルギー消費量が増加した。これに対して、脂肪組織がPTP1Bを欠くと体重が増加し、筋肉や肝臓におけるPTP1B欠失は体重に影響しなかった。神経がPtpn1-/-であるマウスは、レプチン値が逆に上昇しているにもかかわらず、レプチン過敏性であり、グルコース恒常性の改善がみられた。したがって、PTP1Bは主に脳における作用を介して体重や脂肪量を調節している。さらに、神経のPTP1Bは脂肪細胞のレプチン産生を調節しており、おそらくレプチン抵抗性の発症に重要であると考えられる。