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炎症:サイクリン依存性キナーゼ阻害剤は炎症細胞のアポトーシスを促すことにより炎症の消散を増強する
Nature Medicine 12, 9 doi: 10.1038/nm1468
アポトーシスは、有害に働くこともある炎症細胞の除去およびその後の効率的な炎症の消散に不可欠である。本論文では、ヒト好中球は機能性のサイクリン依存性キナーゼ(CDK)をもっており、多様な構造のCDK阻害剤がカスパーゼに依存するアポトーシスを誘導して、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)などの生存因子からの強力な抗アポトーシスシグナルを無効にすることを報告する。CDK阻害剤であるR-ロスコビチン(セリシクリブまたはCYC202)はマウスで、カラゲニン誘発性急性胸膜炎、ブレオマイシン肺損傷および受動的に誘導された関節炎で好中球依存性の確立した炎症消散を著しく促進することがわかった。胸膜炎モデルでは、カスパーゼ阻害剤であるzVAD-fmkがR-ロスコビチンによる炎症の消散促進を妨げるので、R-ロスコビチンは炎症細胞のアポトーシスを増大させると考えられる。また、R-ロスコビチンが、抗アポトーシスタンパク質Mcl-1の濃度低下によってアポトーシスを促進させていることの証拠も得られた。したがって、CDK阻害剤は炎症細胞のアポトーシスを促すことによって確立した炎症の消散を促進しており、この発見は炎症性疾患の治療に新たな可能性を示すものである。