Article

腫瘍免疫:カルレティキュリンの露出が癌細胞死の免疫原性を決定づける

Nature Medicine 13, 1 doi: 10.1038/nm1523

アントラサイクリンで処理された腫瘍細胞は、抗腫瘍免疫応答を引き起こすのに特に有効であるが、エトポシドやマイトマイシンCなどのような他のDNA損傷剤は、免疫原性の細胞死を誘導しない。本論文では、アントラサイクリンがアポトーシスに先立つカルレティキュリン(CRT)の細胞表面への速やかな移行を誘導することを示す。CRTを阻害またはノックダウンすると、アントラサイクリンで処理された腫瘍細胞の樹状細胞による貪食が抑制され、マウスにおけるそれら腫瘍細胞の免疫原性は消失した。アントラサイクリンによって誘導されるCRTの移行と同様な現象は、プロテインホスファターゼ1/GADD34複合体の阻害によってみられた。組換えCRTまたはプロテインホスファターゼ1/GADD34阻害剤を投与すると、エトポシドおよびマイトマイシンCによって誘起される細胞死の免疫原性が回復し、in vivoにおけるエトポシドとマイトマイシンCの抗腫瘍効果が増強された。これらの結果は、CRTが抗腫瘍免疫応答の決定に重要な役割を果たすことを示しており、また免疫原性にもとづいた化学療法戦略の可能性を明らかにするものである。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度