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多発性硬化症:プロトン感受性イオンチャネル-1は中枢神経系の自己免疫性炎症における軸索変性に寄与する

Nature Medicine 13, 12 doi: 10.1038/nm1668

多発性硬化症は、軸索の変性を伴う神経炎症性疾患である。ニューロンで発現されるプロトン依存性酸感受性イオンチャネル-1(ASIC1)は、Na+およびCa2+を透過させ、これらのイオンの過剰な蓄積は軸索変性と関連している。我々は今回、ASIC1が中枢神経系(CNS)の炎症性傷害に伴う軸索変性に寄与するという仮説を検証した。実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を誘導したAsic1-/-マウスでは、野生型マウスに比べて臨床症状が顕著に減少し軸索変性の低下が見られた。EAEマウス脊髄のpH測定値からは、ASIC1を開口するのに十分な組織アシドーシスが認められ、これはアシドーシス介在型の損傷と一致する。Asic1の破壊によるアシドーシス関連保護作用は、in vitro神経移植片でも認められた。認可済みで臨床的に安全なASIC遮断剤であるアミロライドは神経移植片とEAEの両方で同じく神経保護作用を示した。ASICは免疫細胞でも発現されるが、この発現によって、Asic1不活性化による神経保護作用を説明することはできそうもない。なぜならCNSの炎症は野生型マウスとAsic1-/-個体で同程度であったからである。また野生型マウス由来T細胞の養子移入は、Asic1の破壊による保護作用に影響しなかった。これらの結果は、ASIC1遮断剤が多発性硬化症に対して神経保護作用をもつ可能性を示している。

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