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心不全:心不全でみられる交感神経過剰亢進には副腎におけるGRK2発現増加が関与する

Nature Medicine 13, 3 doi: 10.1038/nm1553

交感神経系(SNS)による心臓の過剰刺激は心不全の顕著な特徴であり、血中カテコールアミン濃度の上昇として表れる。心不全にβ-アドレナリン受容体(βAR)アンタゴニストが有効なことは、SNS活動亢進の発症への関与を示しているが、α2ARを介するカテコールアミン分泌の阻害を標的とする交感神経遮断薬は有効でなかった。今回、心不全モデルで副腎アドレナリン受容体のシグナル伝達を調べ、このような交感神経遮断薬が効果のないことを説明可能な分子機構を明らかにし、SNS活動を低下させる新たな方法を発見した。心不全時には、副腎のα2ARの重大な制御不全が、Gタンパク質共役型受容体キナーゼ2(GRK2)の発現増加および活性亢進によって引き起こされる。副腎特異的なGRK2阻害は、心不全の際のα2ARの制御不全を回復させ、その結果血漿カテコールアミン濃度が低下し、心臓でのβARシグナル伝達および機能が改善され、α2ARアゴニストの1つでは交感神経遮断効果が高まった。この結果は、心不全におけるSNS活動亢進の分子機構を明らかにした、我々の知る限りで初めての例であり、今回の研究により副腎のGRK2活性が交感神経遮断薬の新たな標的となることが突き止められた。

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