Article 肺癌:肺癌が疑われる喫煙者の診断的評価と気道上皮における遺伝子発現 2007年3月3日 Nature Medicine 13, 3 doi: 10.1038/nm1556 肺癌は、米国および世界における癌による死亡原因の第1位である。肺癌の高い死亡率(5年以内に80〜85%)の一因は、肺癌を初期段階で診断する有効な手法がないことである。タバコの煙が気道全体に損傷を作り出すと仮定した上で、肺癌が疑われる喫煙者の気管支鏡検査で得られた、太い気道の組織学的に正常な上皮細胞における遺伝子発現が、肺癌のバイオマーカーとなるかどうかを調べた。トレーニングセット(n=77)とアフィメトリクス社製HG-U133Aマイクロアレイで得られた遺伝子発現プロファイルを用いて、肺癌のある喫煙者とない喫煙者を識別可能な、80の遺伝子からなるバイオマーカーを同定した。さらに、独立のテストセット(n=52)を対象としてバイオマーカーの検証を行ったが、精度は83% (感度80%、特異度84%)であった。また5つの医療センターから独立に得た別のバリデーションセット(n=35)についても検証を行った。全被験者について、このバイオマーカーのステージ1の癌に関する感度は約90%であった。気管支鏡検査で得られた下気道細胞の細胞診検査とこのバイオマーカーを組み合わせると感度は95%となり、陰性反応的中率は95%となった。これらの結果は、太い気道の細胞学的には正常な上皮細胞における遺伝子発現が、おそらくはタバコの煙に対する気道全体にわたる癌特異的応答のために、肺癌のバイオマーカーとして使えることを示唆している。 Full text PDF 目次へ戻る