Letter HIV:アカゲザルのTRIM5αはウイルスGagポリタンパク質の迅速な分解を介してHIV-1産生を制限する 2006年5月1日 Nature Medicine 13, 5 doi: 10.1038/nm1562 "哺乳類細胞は、レトロウイルス感染を制限する多様な戦略を発達させてきた。一方でレトロウイルスは、宿主に侵入するためにこうした制限因子への対抗策を進化させてきた。アカゲザルのTRIM5α (tripartite motif-containing 5 isoform-α)タンパク質(TRIM5αrh)は、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)の感染を、ウイルス生活環の細胞侵入後から染色体組込みに至る時点で、侵入するキャプシドを認識して未成熟なままでの解体を促進することで制限する。TRIM5αは、RBCC (RING, B-box 2 and coiled-coil motif)ドメインとB30.2(SPRY)ドメインからなる。B30.2(SPRY)ドメインの配列が、感染制限能と特異性を決定している。TRIM5αrhは、Gag前駆体ではなく、侵入してくる成熟HIV-1キャプシドを標的とするので、TRIM5αrhはHIV-1産生には影響しないとこれまで考えられていた。今回我々は、TRIM5αrhがHIV-1のGagポリタンパク質の迅速な分解を介してHIV-1産生を阻害するが、ヒトのオーソログであるTRIM5αhuはこうした阻害を起こさないことの証拠を示す。この感染制限の特異性はRBCCドメイン中の配列によって決定される。これらの結果から、TRIM5αrhがHIV-1のGagと、Gagの集合中または集合前に、よく知られた侵入後制限とは異なる機構で相互作用することが考えられる。この知見は、ウイルスタンパク質の能動的分解によりHIV-1産生を阻害する細胞因子の存在を実証している。今まで知られていなかったこの制限機構の解明が進めば、将来の抗HIV-1療法の新たな標的が見えてくるかもしれない。" Full text PDF 目次へ戻る