Letter 統合失調症:統合失調症治療の新たな手法としてのmGlu2/3受容体の活性化:無作為化第2相臨床試験 2007年9月1日 Nature Medicine 13, 9 doi: 10.1038/nm1632 統合失調症は、慢性的で複雑な異種性の精神障害であり、その病理学的特徴は、脳の辺縁系における神経細胞内の興奮性および可塑性の喪失である。これらの病理学的特徴は、行動的には陽性症状(幻覚、妄想および思考障害など)、陰性症状(社会的引きこもり、無関心および情意鈍麻など)およびその他の精神病理的症状(精神運動遅滞、考察欠如、注意力および衝動調節の低下など)としてあらわれる。グルタミン酸神経伝達の変調は、数十年間にわたって統合失調症と関連づけられてきたが、一般的に処方されている抗精神病薬は、すべてドーパミン受容体に作用するものである。LY404039は代謝型グルタミン酸2/3(mGlu2/3)受容体の選択的アゴニストであり、動物実験で抗精神病薬となる可能性が明らかになっている。本論文では、げっ歯類を用いて得たデータから、mGlu2/3受容体アゴニストはオランザピンとは異なる機序によって作用するという新たな証拠を示す。この機序を臨床的に検討するため、LY404039の経口プロドラッグであるLY2140023の統合失調症患者に対する効果を、オランザピンを実薬対照とした無作為化二重盲検プラセボ対照の3群間比較試験により評価した。LY2140023による治療は、オランザピンによる治療と同じく安全であり、忍容性も良好であった。治療患者群では、プラセボ群と比較して、統合失調症の陽性および陰性症状の双方において統計的に有意な改善が認められた(4週目でP<0.001)。LY2140023を投与した患者で、プロラクチン上昇、錐体外路症状または体重増加に関してプラセボ投与患者との差異は認められなかったことは注目すべきである。今回のデータは、mGlu2/3受容体アゴニストは抗精神病薬の特性を持ち、統合失調症治療の新たな選択肢となる可能性を示している。 Full text PDF 目次へ戻る