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遺伝子治療:泡沫状ウイルスベクターによるイヌ白血球接着不全症治療の成功

Nature Medicine 14, 1 doi: 10.1038/nm1695

最近の遺伝的免疫不全症候群の治療の成功により、幹細胞遺伝子治療が発達する可能性が実証されつつある。しかし、これらの試みでのガンマレトロウイルスベクターの使用は、一部の被験者で挿入によって近傍の癌遺伝子の活性化と白血病がもたらされたため、ベクター系の修正あるいは変更の研究を促すことになった。今回我々は、イヌ白血球接着不全症(CLAD)の治療に泡沫状ウイルスベクターを用いた結果を報告する。CLADに罹患したイヌで、骨髄非破壊的な条件づけを行い、泡沫状ウイルスベクターを用いた形質導入によりイヌCD18を発現するCD34+造血幹細胞を自家移植すると、5頭中4頭ではCLADの表現型が完全に元に戻り、移植後2年以上にわたり改善状態が持続した。in vitroアッセイでは、CLADの特徴であるリンパ球の増殖と好中球の接着障害が正常化した。遺伝子毒性の合併症はみられず、遺伝子組込み部位の分析では形質導入細胞の多クローン性が示され、ガンマレトロウイルスと比べて癌遺伝子近傍への遺伝子組込みの危険性は低かった。今回の結果は、泡沫状ウイルスベクターを使用して遺伝性疾患の治療に成功した、我々の知る限りでは最初の例であり、泡沫状ウイルスベクターがヒト造血系疾患の治療に有効である可能性が示唆されている。

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