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免疫:エンドセリンB受容体は腫瘍へホーミングするT細胞に対する内皮の障壁機能を仲介し、免疫療法を無効化する

Nature Medicine 14, 1 doi: 10.1038/nm1699

腫瘍ワクチンには十分な免疫原性があるにもかかわらず、多くの場合効果がみられない。この効力不足の原因となる機構はまだ明らかになっていない。本論文では、腫瘍内皮がT細胞のホーミングを妨げ、腫瘍免疫療法を妨害するという、これまで未発見の機構について報告する。ヒトの卵巣癌から顕微切断した腫瘍内皮細胞の転写プロファイリングから、腫瘍内浸潤リンパ球(TIL)の存在の有無に関連する遺伝子が明らかになった。エンドセリンB受容体(ETBR)の過剰発現は、TILの非存在や患者の短い生存期間と関連していた。ETBRの阻害剤であるBQ-788はin vitroでT細胞のヒト内皮への接着を増加させた。この影響は、細胞間接着分子1(ICAM-1)の阻害あるいはNO供与体での処理によって低下した。マウスでは、BQ-788によるETBRの中和によってT細胞の腫瘍へのホーミングが増加した。このホーミングにはICAM-1が必要であり、全身性の抗腫瘍免疫応答には変化を起こさずに、in vivoで効果のなかった免疫療法に腫瘍が応答可能となった。これらの知見は、薬理学的操作によってヒトでの腫瘍免疫療法の有効性を高めることが可能と思われる分子機構を示している。

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