樹状細胞免疫受容体(公式の遺伝子記号はClec4a2、ここではDcirと呼ぶ)は、主に樹状細胞(DC)に発現するC型レクチン受容体であり、細胞外に糖鎖認識ドメイン、細胞質内に細胞に負のシグナルを伝達するITIM(immunoreceptor tyrosine-based inhibitory motif)をもつ。我々は、2種類の関節リウマチモデルマウスの関節でDcirの発現が高いことを見いだした。Dcirは、その構造的特徴から免疫を調節する役割をもつ可能性が示唆され、また自己免疫関連遺伝子がヒトのDCIR遺伝子座に位置決定されていることから、我々はこの分子の病理学的な役割を確認するためにDcir-/-マウスを作製した。加齢したDcir-/-マウスは、血清中の自己抗体の上昇に関連して、唾液腺炎と付着部炎を自然発症した。また、Dcir-/-マウスはコラーゲン誘導関節炎の顕著な増悪化を示した。加齢時またはII型コラーゲンで免疫したDcir-/-マウスでは、DCの過剰な増殖が認められた。さらに、Dcir-/-マウス由来の骨髄細胞(BMC)を顆粒球マクロファージコロニー刺激因子で処理すると、STAT5(signal transducer and activator of transcription-5)のリン酸化が亢進し、野生型由来BMCよりも効率よくDCに分化した。これらの観察は、DcirがDC増殖の負の調節因子であり、免疫系の恒常性維持に重要な役割を担っていることを示している。